大鹿村中央構造線博物館



板山露頭(伊那市)

概要

伊那市高遠町長藤
高遠町の市街地から国道152号線を約4km、山室への分岐点の200mほど手前に東へ入る標識があります。露頭への道沿いに標識があり、正法寺裏の駐車場のすぐ上に露頭があります。


国道沿いの標識


露頭付近のマップ

露頭の様子


マップA地点の露頭。2004年6月23日撮影。

露頭説明

マップに示した走向と傾斜は、ハンマーの位置でのものです。5万分の1地質図幅『高遠地域の地質』に記載された走向・傾斜とすこしちがいますが、『高遠地域の地質』では、露頭の上方で測ったものと思われます。

領家変成帯側は、花崗岩が深部で延びるように変形したマイロナイトを原岩とするカタクレーサイト(破砕岩)です。三波川変成帯側は、黒色片岩を原岩とするカタクレーサイトです。地質境界付近は、幅20cm~数10cmの断層ガウジ(未固結粉砕物)になっています。

現在の断層面はほぼ垂直ですが、右側の三波川変成岩の断層沿いは、領家変成帯側の上昇にひきずられたようなみかけになっています。ハンマーの位置で、少し掘り込んで水平面を見たところ、左横ずれに引きずられたような跡がありました。したがって領家変成帯の側が、三波川変成帯に対し、相対的に手前へずれながら上昇していった動きが読み取れます。これは、『高遠地域の地質』に記されている、断層面の条線(断層のずれが残した傷)の向きとも合っています。

この露頭の断層ガウジから、約2100万年前の放射年代(カリウム-アルゴン年代)が得られています。

露頭近傍の展望台から見える中央構造線の谷


マップB地点から断層線谷の遠望む。2004年1月26日撮影。

中央構造線の破砕帯に沿って藤沢川が侵食しています。領家変成帯の硬いマイロナイト側の斜面が急傾斜なのにたいし、地すべりをおこしやすい三波川変成岩の側は斜面がなだらかです。正面の尾根は第四紀はじめの塩嶺火山噴出物におおわれており、中央構造線の破砕帯がおおわれているため、侵食がはたらかず谷ができていません。

奥の守屋山は、新第三紀層の山です。糸魚川-静岡構造線の西側にもかかわらず、東側のフォッサマグナに分布するグリーンタフ(緑色凝灰岩)を含む内村層と同様の地層におおわれています(『高遠地域の地質』)。

文献

牧本博・高木秀雄・宮地良典・中野 俊・加藤碵ー・吉岡敏和(1996) 地域地質研究報告5万分の1地質図幅『高遠地域の地質』通産省地質調査所。
高木秀雄・柴田 賢・内海 茂(1991) 『中部地方における中央構造線の断層ガウジとフェルサイト岩脈のK-Ar年代』地質学雑誌第97巻第5号p377-384。