大鹿村中央構造線博物館



溝口露頭(伊那市)

概要

長野県上伊那郡長谷村溝口
長谷村役場がある溝口地区の、美和ダム湖に突き出した半島に露出しています。国道152号線からの入口に「美和ダム湖散策公園・中央構造線観察路入口」という標識があります。
※湖の水位が上がると露頭が水没してしまうことがあります。

露頭の様子

My:花崗岩源マイロナイトを原岩とするカタクレーサイト、Cs:変成岩源カタクレーサイト、Fs:珪長質岩脈、Bs:点紋黒色片岩を原岩とするカタクレーサイト、Fg:断層ガウジ、Sbc:珪質黒色片岩を原岩とするカタクレーサイト

露頭説明

この露頭では、地質境界に沿って珪長質岩脈が貫入しています。珪長質岩脈の両側は断層で、両側の変成岩と接しています。この岩脈からは約1500万年前の放射年代(カリウム/アルゴン全岩年代)が得られています。なお半島北側の岩脈からは約1200万年前の放射年代が得られています。

この露頭では、三波川変成帯の内部にも断層ガウジ帯があります。中央構造線に近い側は、顕微鏡下では炭質物を含んだ黒い曹長石斑晶をふくむ点紋泥質片岩を原岩とするカタクレーサイト(破砕岩)です。断層ガウジ帯の東側は、点紋をふくまない珪質泥質片岩を原岩とするカタクレーサイトです。

珪長質岩脈のすぐ西側は、変成岩を原岩とするカタクレーサイトです。顕微鏡下では白雲母がみられます。カタクレーサイトになる前にマイロナイトになっていたかどうかは、顕微鏡下でも判定が困難でした。その西側には、花崗岩源マイロナイトを原岩とするカタクレーサイトがあります。変成岩源マイロナイトを原岩とするカタクレーサイトとの境界は入り組んでいて、どちらか判定できない部分もあります。

この露頭では、地質境界付近には青崩峠~北川のような東から西へのし上げる東傾斜の逆断層群はみられませんが、珪長質岩脈西縁の断層から分岐して、変成岩源カタクレーサイトを切ってマイロナイト源カタクレーサイトとの境界へ続く、東傾斜の断層がみられます。

文献

高木秀雄・柴田 賢・内海 茂(1991) 『中部地方における中央構造線の断層ガウジとフェルサイト岩脈のK-Ar年代』地質学雑誌第97巻第5号p377-384