大鹿村中央構造線博物館



日本列島の土台は「付加体」の岩石

付加体ってなに?

地球の表面を何枚かのプレートが移動している!

地球内部は温度が高く、中心は6000度程度だと考えられています。しかし、ふつうの物質(氷は例外)は高圧では融けにくくなるため、地球の大部分は固体です。中心の鉄とニッケルでできた内核は固体です。内核のまわりの、鉄化合物でできた「外核」だけは液体であることが地震波の伝わり方から推定されています。外核を囲む、地球体積の大部分をしめる部分を「マントル」といいます。「マントル」とは、中心核を「包むもの」という意味です。マントルは、かんらん岩質の重い岩石でできています。マントルの岩石は固体ですが、大部分は高温のため変形しやすく、ゆっくりとした速度ならば移動できます。表層の、ごく薄い、軽い岩石でできた部分を「地殻」といいます。

一方、地球表面は冷たい宇宙空間に冷やされるため、マントル最上部は冷たく硬くなっています。 冷たく硬いマントルと、その上の地殻の部分をあわせて「リソスフェア」 といいます。リソスフェアは何枚もの部分に分かれて、それぞれ別々に動いていますが、その一体に動いている1枚のリソスフェアを「プレート」 といいます。プレート移動の原動力は、マントル最上部がだんだん冷えて重くなり、自分の重さで地球内部へ戻っていくためだと考えられています。

海洋プレートの移動と付加体のでき方

   
上から順に砂岩、チャート、石灰岩、緑色岩(クリックして拡大)

中央海嶺のような、プレートが開いていくところでは、割れ目を埋めるように深部から高温のやわらかいマントルが上昇し、冷えて新しいプレートをつくります。その一部は、マントルが高温のまま圧力が低い浅部へ上昇するために成分の一部が融けて玄武岩質のマグマが生じます。マグマが地下でゆっくり固まると斑れい岩ができ、地表(海底)に湧き出した溶岩が急に固まったものは玄武岩になります。こうして、上の図の右端の海嶺で、玄武岩質の海洋性地殻ができます。深部からマントルが上昇しているハワイのようなホットスポットでも、同じしくみでマグマができ、火山島ができます。海底で固まった玄武岩や、海水が地下水として循環する深さ約700メートルまでの斑れい岩は、まだ熱いうちに水と反応し、水を含む変質鉱物が生じます。これらの水を含む玄武岩質の岩石は、大陸の下に沈み込む時に変成作用を受けて「緑色岩」になります。

中央海嶺でできた新しいプレートは、海嶺から離れるように移動していきます。海洋地殻の変質玄武岩の上には、浮遊性生物(プランクトン)の死骸がたまります。石灰質の殻をもつ微小なプランクトンの死骸がたまったものは、「石灰岩」になります。火山島のサンゴ礁も石灰岩になります。


古生代のフズリナを含む秩父帯の石灰岩(青木川上流)の研磨片実体顕微鏡写真

海洋プレートが海嶺から離れるにしたがい、冷えていくとともに海洋プレートは厚くなり、重さで沈下して水深は深くなっていきます。深さ2000メートル程度で、微細な石灰片は水圧のために溶けてしまうようになり、それより深い海底には石英で殻をつくるプランクトンの殻だけがたまります。「放散虫(ラジオラリア)」という単細胞動物が、石英で殻をつくる 代表的なプランクトンです。石英で殻をつくるプランクトンの殻だけが固まった岩石がチャートです。チャートは白い岩石ですが、少し不純物が混じると色がつきます。大陸から風に乗ってきた火山灰が少しだけ混ざり、酸化鉄により赤色になったものは、とくに「赤色チャート」といいます。火山灰成分が多いものは「赤色頁岩(けつがん)」といいます。


放散虫化石が見える赤色チャート(小渋川転石)の研磨片実体顕微鏡写真

これらの遠洋性の堆積物が固まった岩石を「遠洋性岩石」といいます。遠洋性岩石を次々と堆積させながら、海洋プレートは大陸の端へ近づいてきます。


四万十帯の砂岩(小渋川転石)の偏光顕微鏡写真

大陸プレートの下に沈みこみ始める場所には、深い海溝ができます。海溝までは海面下にあっても大陸プレートです。海岸付近の沖合には、陸上から砂や泥が流れ込んで堆積します。固結していない砂と泥は、プレート境界型地震などをきっかけに、海底土石流となってプレート境界の海溝へ流れ下っていきます。海底土石流が堆積し固結した砂岩は「タービダイト砂岩」と呼ばれ、砂粒の間を泥がしっかりと埋めて、よく固結した砂岩になります。次の土石流までの期間は泥だけがゆっくりと堆積し、タービダイト砂岩と泥岩の互層が海溝を埋めていきます。


廣野・芦(1998)原図を改変

海洋プレートの沈みこみにともない、海洋プレート上の堆積物は剥ぎ取られていきます。陸側プレートと海洋プレートがかみ合い、プレート境界型地震が発生するような場所では、遠洋性堆積物や海洋地殻の一部までも剥ぎ取られます。これらの岩石は陸側プレートの下側に底付けされます。こうして海洋プレートから陸側プレートに付け加わって、大陸プレート側の一部になったものを「付加体」 といいます。(ただし、沈み込み条件によっては、海洋プレートが陸側を削り取って沈み込む場合があることも知られています)

付加体が加わることにより、大陸プレートは海側に成長します。海溝は海洋プレート側に後退していきます。

日本列島の土台は「付加体」の岩石!

古アジア大陸の東縁では、約3億年前の古生代後期から、古太平洋のプレートが沈み込んでいます。 3億年の間、アジア大陸のへりに太平洋に向かって成長した付加体が、のちに、日本列島になりました。

 

西南日本では、日本海側から太平洋側に向かって、古生代後期~古第三紀の付加体が、年輪のように並んでいます。

日本海側に古生代~中生代三畳紀の付加体(三郡・秋吉~超丹波~飛騨外縁~上越帯)

日本列島中軸部に中生代ジュラ紀の付加体(丹波~美濃~足尾帯/秩父帯)

太平洋側に中生代白亜紀~新生代古第三紀の付加体(四万十帯)

中央構造線の両側の岩石は、もとは付加体

中央構造線は、アジア大陸の一部になっていた付加体を、白亜紀以後に切って組み替えた断層です。つまり、 領家変成帯も三波川変成帯も、もともとは「付加体」 です。

(南アルプスの中腹~稜線には、ジュラ紀と白亜紀の付加体がそのまま露出しているので、外帯側は付加体、内帯側は付加された大陸側と思いがちですが、それは誤りです。)

 

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