大鹿村中央構造線博物館



日本列島付近で発生する地震

日本列島は、大平洋プレートとフィリピン海プレートが大陸プレートの下に沈みこんでいる「沈み込み帯」にあります。日本列島とその周辺で発生する地震には、3~4とおりのタイプがあります。

地震は、冷たくて固い場所で発生します。温度が高いと、岩石がゆっくりと延びるように変形するようになり、震源断層運動を起こす弾性変形(バネのような変形)が蓄積しないからです(ただし、火山性の群発地震は流体の移動で発生し、ふつうの地震とはメカニズムがちがうので、例外)。

沈み込み帯では、冷たい海洋プレートが沈み込んでいます。沈み込んだ海洋プレートの内部では、深部まで地震が発生します。沈み込まれる側の大陸プレートは深さに応じて地温が高くなるので、地震が発生するのは地殻内の深さ20kmまでです。海洋プレートと大陸プレートのプレート境界では、大陸プレート側も冷やされるので、35km~50kmの深さまで地震が発生します。

アウターライズ地震

沈み込み直前の海洋プレート内で発生する地震

冷えて固い海洋プレートは、自分の重さで沈んでいきます。海洋プレートは沈み込み口の直前から曲がり始めるので、海洋プレートの中で地震を発生します。このタイプで海底に地表地震断層が生じるような浅部で発生するものを「アウターライズ地震」といいます。遠方のため海岸で感じる揺れが弱い割に、大きめの津波が来ることがあります。

スラブ内地震

沈み込んだ海洋プレートの内部で発生する地震

沈み込んだ海洋プレートを、一枚岩や床板を意味するスラブと言います。沈み込んでいくスラブの中で発生する地震を「スラブ内地震」といいます。スラブ内地震は数100kmの深さまで発生します。深い場所で発生する場合は被害は生じにくいのですが、深さ60km程度より浅いと、建物に多少の被害が生じることがあります。

プレート境界型地震

沈み込んだ海洋プレートと大陸プレートの境界面で発生する地震

大平洋プレートは1年に約10cm、フィリピン海プレートは1年に約4cmの速度で沈み込んでいます。

プレート境界面付近の岩盤には速い速度で変形が溜まっていくので、短い間隔で地震発生をくりかえします。また、広い面積のプレート境界面がずれ動くので、大きな規模(マグニチュード)の地震が発生します。たとえば1854年安政東海地震と安政南海地震、1923年大正関東地震、1944年昭和東南海地震、1946年昭和南海地震、1968年十勝沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震はこのタイプです。

次の地震発生までの期間は、海洋プレートと大陸プレートは噛み合っていて、大陸側はゆっくりと引きずり込まれていきます。変形が限界に達してプレート境界面が一気にすべり、大陸側が跳ね戻ります。ゆっくりと引きずり込まれていく変動を「地震間地殻変動」といい、地震発生時の逆向きの瞬間的な変動を「地震時地殻変動」といいます。

たとえば静岡県の御前崎に近い相良港は1854年安政東海地震のとき約1m隆起しました。現在の御前崎は1年に5~7mmの速度で沈降していて、次の東海地震が準備されている期間にあたります。

上部地殻内地震

沈み込まれている日本列島側(大陸プレート側)の地殻の上部で発生する地震

沈み込んでいる海洋プレートによる日本列島側への影響は、プレート境界型地震サイクルの押し引きで多くは解消されます。しかし解消され残った変形が日本列島の地殻にも蓄積していきます。その結果、長期間では山地が隆起したり、沈降盆地が埋まって平野になったりなどの、今の日本列島の地形が造られています。

日本列島の地殻の深さ20kmより浅い部分は冷たくて固いため、地震が発生します。プレート境界と比べて変形が溜まっていく速度が遅いため、地震発生間隔は長くなります。またマグニチュードもプレート境界型より小さめです。

一方、震源断層が陸地の浅い地下に生じるため、震源域付近の地表の揺れは大変強くなります。ただし、震源域がプレート境界型より狭いので、強く揺れる範囲は狭くなります。

沈み込んだ海洋プレートはどこにある?

日本海溝から沈み込んだ大平洋プレートは、日本列島~日本海~アジアたいりくの下を斜めに沈み込んで、ロシアのハバロフスクや北京の下では深さ660kmに達しそこからほぼ垂直に深部へ沈み込んでいることが明らかになっています。プレート境界では海溝から深さ50kmまでの領域が陸側プレートと噛み合っていて震源断層の断層面になります。

南海トラフから沈み込むフィリピン海プレートは、山陰地方の下の深さは分かっていませんが、日本海の沖合の下まで達していることは確実です。プレート境界では深さ35kmまでの領域が噛み合っていて、震源断層面になります。

スラブ内地震が発生する位置と深さは、沈み込んだ海洋プレートの等深線付近かやや深い場所です。

海溝付近を除き、内陸の深さ20kmより浅い場所で発生する地震は、陸側の地殻内地震です。

地震速報で震源の深さに注目すると、どのタイプの地震か、おおよその判断ができます。

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