震源断層
震源断層と震源域
ひとつの地震について、発生源となった地下の断層面を、その地震の「震源断層」といいます。震源断層は面積を持った「面」です。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)の震源断層の面積は、200km×500kmという広大なものでした。
震源断層の真上の地表の領域を、その地震の「震源域」といいます。震源域の下のすべての部分から地震波が発生しました。
じっさいの震源断層の形は複雑ですが、地表に伝わった地震波や地殻変動の観測データから、おおよその「震源断層面」の外縁、面積、向き(走向)と角度(傾斜)、ずれ動いた方向、最初にずれ動き始めた場所と時刻、断層面内のすべての場所がずれ動き終わった時刻、断層面内のすべり量の大小、とくに強い地震波を発生した部分などを推定します。
震源(破壊開始点)
震源断層面の中で、最初にずれ動き始めた位置を「震源」といいます。震源が震源断層面の中央にあるとは限りません。また、震源部分が一番大きくずれ動くとか、一番強い地震波を出すわけでもありません。
断層がずれ動く速度は自転車ぐらいですが、ずれ動いている位置が移っていく速度はジェット機より速いです。ずれ動いている位置の移動とともに地震波が発生する位置も移動していきます。最後にずれる量がゼロになって、震源断層面の拡大も終わります。
岩盤の振動である地震波は、最初に震源から発生します。震源から発生した地震波が最初に地表に到達するので、各地の観測点で揺れを記録し始めた時刻から、震源の位置はすぐに計算されて速報されます。
震央
震源の位置は、震源の直上の地表の地点(震央)と深さで表します。
歴史時代の地震については、今の「破壊開始点の直上の点」とは意味が異なり、古文書に記録として残された被害分布から震央を割り出しています。むしろ地震災害が生じた地域の中心というイメージに近いと思います。「震源地」という言い方も同じようなイメージを伴うので、使わない方が良いでしょう。
地表地震断層
震源断層面の上端が地表に現れたものを地表地震断層と言います。
浅い地殻の中で広い面積の震源断層面がずれ動いた場合、その一部が地表まで達して地表面に食いちがいが現れる場合があります。
たとえば1995年1月17日の兵庫県南部地震(マグニチュード7.3)の震源断層面の面積は20km×60kmで震源の深さが18kmだったので、その一部が淡路島の地表に現れました。ただし、震源断層は神戸の下にも続いていましたが、神戸側の地表までは達せず、神戸には地表地震断層は現れませんでした。
地すべりのすべり面や地盤の変状は、強い揺れにより発生したもので地表地震断層ではありません。高速道路が倒れたような被害も、強い揺れによるものです。
2014年11月22日の長野県神城断層地震(マグニチュード6.7)でも、2016年4月14日の熊本地震(マグニチュード7.3)でも、震源断層の一部が地表地震断層として出現しました。
浅い場所で発生する地震でも、震源断層面の面積が小さければ地表地震断層は現れません。たとえば2018年6月18日の大阪府北部地震(マグニチュード6.7)の震源の深さは13kmで、震源断層の面積は約5km×5kmだったので、地表にずれ目は現れませんでした。
深い場所で発生する地震では、規模が大きくても、地表地震断層は現れません。
地震時地殻変動と津波
地震発生にともなう急激な地殻変動も、震源断層運動と一体に生じます。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、沖合の海溝付近では50mものずれが生じ、海底も10m近く上昇し、深さ8000mの海底から海面までの大量の海水が持ち上げられて巨大な津波が発生しました。
マグニチュード
地震発生源の規模
震源断層面の面積とマグニチュードは密接に関連しています。震源断層面の面積×すべり量×岩盤をずらすために必要な力が、震源断層がずれ動いて発生したエネルギーになります。
マグニチュードが1つ上がると、震源断層運動で発生するエネルギーは約32倍になります。
じっさいには、地表付近の地震波を観測してマグニチュードを決めます。計算のしかたはいろいろあります。
「気象庁マグニチュード」は、日本列島付近の地震の起こり方を考慮し、建物に被害を与えやすい波長の地震波の発生源としての規模を表すように工夫したマグニチュードです。気象庁マグニチュードは「Mj」という記号で示されます。ただし気象庁マグニチュードは非常に大きな地震の規模はうまく表せないので、2011年東北地方太平洋沖地震のマグニチュード9.0は次に述べる「モーメント・マグニチュード」です。
非常に長い波長の揺れも含めて、震源断層から発生する全エネルギーを表すように工夫したマグニチュードが「モーメント・マグニチュード」です。全世界で発生する地震について、アメリカ合衆国地質調査所が発表するのは、モーメント・マグニチュードで、「Mw」という記号で示されます。
1995年兵庫県南部地震の気象庁マグニチュードは7.3、モーメント・マグニチュードは6.9です。日本列島付近で発生する地震と、世界中の地震を比べるときには、マグニチュードのちがいに注意が必要です。
今は気象庁マグニチュードとモーメント・マグニチュードの両方が、政府系独立行政法人のホームページに掲載されています。
⇒防災科学技術研究所F-NET(広帯域地震観測網)内「地震のメカニズム情報」のページ