大鹿村中央構造線博物館



活断層ってなに?

活断層

最近の時代に、地表や地表付近にくりかえし食いちがいが生じた断層です。地殻変動の様子は、数十万年程度は大きく変わりませんから、最近の時代にずれ動いてきた断層ならば、近い将来にもずれ動いて地震を発生すると考えられます。

「最近の時代」は、おおむね200万年前~現在(新編日本の活断層)ですが、工学的な指標としては、たとえば原子力発電所の重要構造物の耐震設計について125000年前以降とし必要な場合は約40万年前以降まで遡って活動性を評価する(原子力規制委員会新規制基準)など、目的により使い分けられています。

地表地震断層による地表面の食いちがい

震源断層の上端が地表に現れたものが地表地震断層でした。地表地震断層の食いちがいが侵食で失われたり洪水で埋まったりすることなく、再び地表地震断層が出現すると食いちがいが蓄積していきます。その結果、地形にも河川や尾根の横ずれによる屈曲や、縦ずれによる直線的な崖地形として見えるようになります。私たちが「活断層」として知ることができるのは地表付近の食いちがいですから、活断層とは過去の地表地震断層のくりかえしの結果を見ていることになります。

活断層の活動履歴の推定

堆積年代が分かっている堆積層を断層が切ってずらしていれば、その断層がずれ動いたのは地層が堆積した年代以後ということが分かります。その上を覆っている堆積層が切られていなければ、断層がずれ動いたのはその地層の堆積以前ということになります。

たとえば1000年前の堆積層が食いちがっておらず、2500年前の堆積層が1回食いちがい4000年前の堆積層が2回食いちがっていれば、その活断層の最新の(地表付近に食いちがいを残した)活動は1000年前~2500年前、その前の(地表付近に食いちがいを残した)活動は2500年前~4000年前だったと推定できます。に、その断層のずれ動きが生じたことが分かります。このデータから、この活断層のずれ動きで地表に食いちがいが生じるのはおおよそ1500年おきで、前回は1000年前より新しく、次に動くのはたぶん少し先だが、もし前々回が3000年前で前回が2000年前なら1000年もタイムオーバーしていて、次の活動が今日起こるかもしれないといった推定ができます。ただし調査地点は限られ、少し離れた場所に食いちがいが現れたことがあったかもしれません。あくまで現時点で知られているデータに基づく推定です。

この例は架空の活断層ですが、活断層がずれ動く時間スケールや、その評価の精度は、大体このぐらいと思います。もちろん、もっとデータが得られている活断層も、もっとデータが少ない活断層もあります。広い範囲の地形から活断層が推定されても、狭い範囲では位置を特定できていないものもあります。活断層かどうか確定できていない断層もあります。

ただし活断層であることが確実なら、次にずれ動く時期が不明でも、いつか必ずずれ動くということは言えます。

マグニチュード6以下の地震は、活断層に食いちがいが現れずに発生する

地表の活断層の地下延長部で発生する地震でも、マグニチュードが6.5以下の規模では地表地震断層は出現しません。

内陸の地殻内地震の震源は深さ10km程度がふつうですが、マグニチュード6.0の震源断層の面積は5km×5kmていどなので、地表まで達しません。

マグニチュード6.5~7.0の場合は、震源断層の上端が地表に現れる場合も現れない場合もあります。
マグニチュード7.0以上だと震源断層の一部が地表に出現します。
マグニチュード8.0では、震源断層のほぼ全長の上端が地表に出現します。

逆に言えば、活断層が見られる場所では、過去にマグニチュード7.0以上の地震がくりかえし発生してきたし、これからも発生するだろうと言うことができます。

またマグニチュード6.5以下の地震はもっと短い時間でくりかえすだろうとも言えます。

活断層の分布(中部地方)

この図は、1991年に活断層の研究者が共同で、全国の活断層を統一基準で表した資料(活断層研究会(1991)『新編日本の活断層』、東京大学出版会)の一部を、立体地図上に書きこんだものです。

もとの資料は、おもに航空写真を用いて約200万年前より新しい地形の食いちがいを読み取るなどして、活断層を推定し、その評価のカタログと、200万分の1地形図に位置を書きこんだマップからなります。

この図では「確実度」が高いとされたものだけを書き込んであります。また「活動度A級」を太線、「活動度B~C級」を細線で表しています。

活断層の確実度

断層の出現による食いちがいは、線状の地形(リニアメント)となってあらわれることが多いのですが、線状の地形が必ず新しい断層の出現によるとは限らず、侵食によるものもあります。くいちがっている地形面が、ほんとうに同じ時代のものだったか判定できないこともあります。新しい堆積層に埋まってしまえば見えなくなります。そこで人間がどこまで判定できたかにより「確実度」という区分をつけています。

確実度Ⅰ:活断層であることが確実なもの
確実度Ⅱ:活断層であると推定されるもの
確実度Ⅲ:活断層の疑のあるリニアメント

活断層の活動度

活動度とは、長い期間で見たときに、地形が食いちがっていく速度で表します。ふつうの断層運動は、長い間動かずにいて瞬間的にずれ動き、また長い間動かないということをくりかえします。そこで、1000年に1回1mのずれ動きをくりかえしてきた活断層も、5000年に1回5mのずれ動きをくりかえしてきた活断層も、活動度は同じになります。活動度は1000年平均で表現しますが、1000年おきにずれ動くという意味ではありません。

活動度A級:1000年間に1m~10mの割合の食いちがい速度をもつ活断層
活動度B級:1000年間に0.1m~1mの割合の食いちがい速度をもつ活断層
活動度C級:1000年間に0.01m~0.1mの割合の食いちがい速度をもつ活断層

活断層の分布から見える近畿~中部地方の地殻変動

活断層の向きとずれ方を見ると、筑摩山地西縁(松本盆地東縁)、赤石山地東縁(甲府盆地西縁)、木曽山脈東縁(伊那盆地西縁)、養老山地東縁(濃尾平野西縁)、鈴鹿山地東縁(伊勢平野西縁)、比良山地東縁(琵琶湖西縁)、生駒山地西縁(大阪平野東縁)など南北方向の活断層は東西のどちらかが上がり反対側が下がる逆断層になっています。

また長野盆地西縁断層、跡津川断層、六甲断層などの北東‐南西方向の活断層は右横ずれ断層(断層を挟んだ反対側が右へずれる)になっています。

諏訪盆地を造っている活断層、阿寺断層、根尾谷断層などの北西‐南東走向の活断層は左横ずれ断層(断層を挟んだ反対側が左へずれる)になっています。

このことは、活断層をずれ動かす力の向きが東西圧縮であることを表しています。

伊豆半島北縁の活断層と、その北方の御坂山地北縁(甲府盆地南縁)の活断層は、北東‐南西方向の逆断層で、伊豆半島が南東から押す力がかかっていることが分かります。

この活断層の分布から読み取れる日本列島の100万年スケールの変形と、測量による100年スケールの変形、GNSS(GPS)衛星による10年スケールの変形は、よく一致しています。

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