大鹿村中央構造線博物館



マグマのでき方1:中央海嶺とホットスポットのマグマ

中央海嶺でのマグマの発生

ふつうの物質が融ける温度は、高圧ほど高温になります。そのため高圧の深部では、かんらん岩質のマントルは融けられません。

上の図は、深さに応じた地温と、かんらん岩が融ける温度(融点)を表しています。融点には2種類あり、ソリダス(青線)は固体の一部が融け始める温度。リキダス(赤線)は液体の一部が固まり始める温度です。ソリダスとリキダスの間では固体のかんらん岩と液体のマグマが共存しています。その状態を「部分融解」といいます。

グラフの中央の矢印は、地下深部の温かい固体のマントルが上昇している場合です。深部の固体のマントル(D)は、浅部は圧力が低く融点が低いので、融点(ソリダス)を横切ったところで一部が溶けだします(D’)。溶けた岩石がしだいに集まり(D’’)、マグマになって浮力で上昇します。圧力が低い浅部へ上昇するために融けるので「減圧融解」といいます。

マグマと岩石が共存している部分融解の状態では、融けやすい成分が多くマグマに入るので、かんらん岩質のマントルの部分融解により、玄武岩質のマグマができます。

中央海嶺は海洋プレートどうしが離れているところです。その割目を埋めるように上昇した温かいマントルの一部が、この減圧融解を起こしてマグマが生じているわけです。そのマグマは、部分融解で生じた玄武岩質のマグマです。

玄武岩質のマグマは上昇し、固まって玄武岩質の海洋地殻を造ります。その下では温かいマントルが冷えてプレートになり始めています。海洋プレート全体の厚さは50km~100kmですが、その厚みのほとんどは冷えて固くなったマントルで、表面の海洋地殻の厚さは5km程度です。

ホットスポットでのマグマの発生

厚さ2900kmのマントルの深部から温かいマントル上昇し、地表付近までに達している地点がホットスポットです。
ホットスポットでも、減圧融解によって玄武岩質のマグマが生じます。海底に湧き出した場合は火山島を造ります。過去の地球では何度も大規模なホットスポットの拡大があり、玄武岩の巨大な溶岩台地が造られました。海底の溶岩台地は「海台」と呼ばれます。

マントル水

マントルの内部にはわずかな水が含まれています。その水はマントルが融けてマグマになるときにマグマに含まれます。そのマグマが固まった中央海嶺やホットスポットの玄武岩には、急冷して固結した火山ガラスの中に、液包として水が含まれていることがあります。その水は、マントルに含まれていた水と考えられます。

そのH2Oの同位体組成は、『マグマに含まれる水のH2O』の図の右下に示されているように、水素がマイナス70~100パーミルの同位体比を示す(海水のH2Oより重水素が7~10パーセント少ない)という特徴があります。

 

⇒「日本列島へ来た海洋玄武岩」へ進む

⇒「謎の鹿塩温泉」TOPに戻る