大鹿村中央構造線博物館



鹿塩温泉のH2Oの長い旅路2:含水玄武岩

この図は海洋地殻の誕生→移動→沈み込みによる水の移動を1992年にギゲンバッハという人がまとめた図で、大鹿村中央構造線博物館発行の風早康平さんの2013年の講演記録『鹿塩温泉の水と塩はどこから来たのか』に掲載されています。

図の右上の中央海嶺に書かれた半円形の矢印は、誕生したばかりの海洋地殻の海底~深さ数100mを循環する海水を表しています。まだ熱い地殻の鉱物と海水のH2Oが反応して、水酸基(OH)含む変質鉱物ができます。
水酸基(OH)含む鉱物を「含水鉱物」といいます。雲母、角閃石、緑泥石、蛇紋石や粘土鉱物は代表的な含水鉱物です。変質して含水鉱物を含む玄武岩(含水玄武岩)が、中央海嶺から海溝へ、そして地球内部へのH2Oの運び手になっています。

ギゲンバッハの図には、10の14乗グラム=億トン単位の1年間の水の移動量と、水素同位体比が書き込まれています。
中央海嶺でマントルの減圧融解で生じるマグマに含まれるマントル水のマイナス60パーミルの水は年間1億トンです。これがマントルから地表に運ばれる水です。
一方、含水玄武岩に含まれて海溝から沈み込むマイナス35パーミルの水が年間9億トン、さらに海溝堆積物に含まれて海溝から沈み込むマイナス15パーミルの水が年間1億トン加わります。これが海溝から地球内部へ持ち込まれる水です。しかしその一部は、沈み込み帯のマグマ水(安山岩水)として地表に戻ります。その水素同位体比はマイナス20パーミルで年間2億トンと推定しています。

 

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