大鹿村中央構造線博物館



いろいろな水の重さ2:海水起源の温泉水のH2O

 

海水と天水が混ざった温泉水のH2O

上右は水素同位体比と酸素同位体比の相関図、上左は水素同位体比と塩化物イオン濃度の相関図です。

小さい青○は薩摩半島の指宿温泉、青×は熱海・伊東温泉の多数の源泉のデータです。

同じ温泉地の多数の源泉は、もとの原水がいろいろな割合で天水が薄められたものです。その値とその地域の天水の値をグラフに書きこむと、青色の線で表した線上に並びます。その線の天水と反対側への延長上に原水があるはずです。

上右の図で、指宿のH2Oも熱海・伊東のH2Oも、天水と反対側の終点は海水になります。これから、温泉の原水は海水で、海水と天水が混ざった地下水が温泉水になっていることが分かります。

指宿も熱海・伊東も塩分を含む温泉です。上左の図で、水素同位体比と塩化物イオン濃度の相関を見ると、水素同位体比の減少に比例して塩化物イオン濃度も減少しており、海水とその地域の天水を結ぶ線上に並んでいます。つまり塩化物イオンも海水起源で、いろいろな程度に天水で薄められて湧出していることが分かります。

化石海水のH2O

奥羽本線沿いの秋田・青森県境にある矢立温泉と湯の沢温泉(現在廃業という情報あり)は、地質図によると700万年前~500万年前ごろの海底に堆積した火山噴出物からなる地層から湧出しています。緑○が矢立・湯の沢温泉のデータです。

上左の図で、水素同位体比と塩化物イオン濃度の相関図を見ると、指宿や熱海・伊東温泉と同じく、海水とその地域の天水(寒冷地や内陸ほど重水素が少ない)を結ぶ線上にならんでいます。このことは、H2Oも塩化物イオンも海水起源と考えられます。

ところが上右の水素同位体比と酸素同位体比の相関を見ると、緑色の線の上に並び、原水の方へ延ばすと、重い酸素の方に大きく振れています。

じつは岩石の成分の半分は酸素です。岩石は鉱物の集まりですが、たいていの鉱物は酸素が成分の一部になっています。たとえば石英はSiO2、珪素が1個と酸素が2個結びついてできている鉱物です。石英のきれいな結晶が宝石の水晶です。

地下は地温が高いので、H2Oが地層中に閉じ込められると、長い間に鉱物の成分の酸素と交換が進みます。鉱物の酸素は海水のH2Oの酸素より重い酸素の割合が多いので、長く地層中にあるH2Oの酸素同位体比はプラスの方へ変化します。

水素は岩石中に1%もありません。したがって、水素の方は、もとの海水の同位体比からほとんど変わりません。

化石海水の場合は、こうして水素同位体比は変わらず、酸素同位体比がプラス側に変わっています。化石海水が湧出している温泉では、その原水を出発点として、天水による薄まり具合に応じて、その地域の天水と結ぶ線上に源泉が並びます。

 

 

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