大鹿村中央構造線博物館



いろいろな水の重さ4:マグマに含まれる水のH2O

 

日本列島のマグマに含まれるH2O

図の右上の薄赤い楕円形は、日本列島の流紋岩質や安山岩質の火山から噴いている高温の火山ガスの同位体比です。火山ガスの成分のほとんどは水蒸気(H2O)で、残りは炭酸ガス(CO2)、亜硫酸ガス(SO2)、硫化水素ガス(H2S)、塩化水素ガス(HCl)などです。このガスが地下水に溶けると強酸性の温泉水になります。

赤色の線は、高温~低温の火山ガスと、火山ガスが地下水と混ざった熱水の同位体比です。これらのH2Oの同位体比は、天水と火山ガスを結ぶ線上に並びます。
黄色の印は、ナトリウム‐塩化物泉(食塩泉)として知られる箱根温泉と登別温泉の、多数の源泉の同位体比です。この場合も天水と火山ガスを結ぶ線状に並んでいます。
どちらの原水(天水と混ざる前の水)のH2Oも高温の火山ガスと同じ同位体比のH2Oで、マグマに含まれていたH2Oそのものと考えられます。

マグマから放出されたH2Oに溶けている成分が、中性のNaCl型になる理由として、マグマに含まれるナトリウムと熱水の反応が考えられています。そもそもマグマは岩石が融けたものですが、岩石を構成する主要な鉱物の長石は、ふつうにナトリウムを含んでいます。

Na2O(酸化ナトリウム)+HCl(塩酸)⇔NaCl(食塩)+H2O(水)

箱根温泉の研究から得られた基本モデルでは、地下深部でマグマから分離した温泉水はNaCl型になり、浅い場合は温泉水から分離した火山ガスが地下水に溶けて、ほとんどHCl型になるとされます。深さ2~3kmより浅い場合はHCl型になるという実験結果があります。

中央海嶺やホットスポット火山のマグマに含まれるH2O

図の右下は、中央海嶺や、ハワイなどのホットスポット火山のマグマから固まった溶岩に含まれている水の同位体比です。
これらの火山は、日本列島の火山と異なり、すべて玄武岩質の溶岩でできています。その元のマグマは、かんらん岩質のマントルの一部が融けてできたものなので、これらの水はマントルに含まれていた水と考えられています。

この同位体比のちがいは、中央海嶺とホットスポット火山のでき方と、日本列島などの海洋プレートが沈み込んでいる「沈み込み帯」の火山のでき方のちがいによります。「沈み込み帯」のマグマの発生には、沈み込む海洋プレートが持ち込む水が、深く関わっています。

って、中央海嶺とか、ホットスポットとか、沈み込み帯ってなんのこと?
そもそも火山、あるいはマグマはどうしてできるのでしょうか。

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