大鹿村中央構造線博物館



NO.8マイロナイト

「花崗閃緑岩源眼球状マイロナイト」
Augen mylonite derived from granodiorite
中央構造線からの距離670m

  

粒径10mmを超えるカリ長石ポーフィロクラストが見られる.大型のカリ長石ポーフィロクラストを含む斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイトは,通称「眼球状マイロナイト」と呼ばれている.

No.8+2角閃石黒雲母トーナル岩源プロトマイロナイト

試料番号03122216(中央構造線からの距離720m)

  

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石英は細粒多結晶化しているが,黒雲母の細粒化がほとんど見られないため,プロトマイロナイトに区分した.石英を主要構成鉱物とする岩石を原岩とするマイロナイトの場合,その塑性変形機構が,石英の細粒多結晶化によるものであることを明瞭に示す試料である.
一方,No.8露頭の花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイト(眼球状マイロナイト)とは30mしか離れておらず,境界断層も見当たらない.No.8+1露頭のトーナル岩源マイロナイトとNo.8露頭の変形のちがいは,中央構造線からの距離のちがいによるものではなく,原岩のカリ長石の有無と石英の量比に由来している.プロトマイロナイトゾーンとマイロナイトゾーンの分帯をおこなう際には,同じ原岩のマイロナイトどうしを比較する必要があり,したがってこのゾーニング境界は見直される可能性がある.
再結晶石英の形態定向配列は,左ずれのセンスを示す.
⇒マイロナイトの剪断センスの判定

 
角閃石・斜長石ポーフィロクラストと細粒多結晶化石英.中央の斜長石の割れ目を充填した再結晶石英の粒径は相対的に大きく,割れ目の展張により相対的に剪断応力が低い領域に再結晶したためと考えられる.

No.8花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト

試料番号03122217(中央構造線からの距離670m)


カリ長石の大型ポーフィロクラスト

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斜長石ポーフィロクラストとプレッシャーシャドゥ
※プレッシャーシャドゥ:ポーフィロクラストの両翼の細粒基質中に,ポーフィロクラストから“尾”のように伸びた,再結晶鉱物の粒径が相対的に大きい領域が見られる.その領域は,剪断の向きにたいしてポーフィロクラストの反対側にあたり,応力が相対的に低いために再結晶鉱物の粒径が大きめになると考えられ,「圧力の影=プレッシャーシャドゥ」と呼ばれる.プレッシャーシャドゥは有色鉱物の混在が少ないために,肉眼でも周囲の暗色の細粒基質と識別できることが多い.
プレッシャーシャドゥの形態は,シグマ(σ)タイプとデルタ(δ)タイプに分けられる.シグマ(σ)タイプはおもに引きずり,デルタ(δ)タイプはおもにポーフィロクラストの回転により形成されると考えられる.プレッシャーシャドゥの非対称な形態から,マイロナイト形成時の剪断のセンスを判定できる.
⇒非対称プレッシャーシャドゥによる剪断のセンスの判定 
デルタ(δ)型プレッシャーシャドゥの形態と,再結晶石英の形態定向配列から,左ずれのセンスが読み取れる.


カリ長石ポーフィロクラスト.
左下方の縁辺にミルメカイトの形成が見られる.

No.8-1細粒ざくろ石白雲母黒雲母片麻岩源マイロナイト

試料番号03122302(中央構造線からの距離640m)

  

肉眼では,暗褐色で緻密な見かけを呈する.

研磨片の拡大観察では,まばらに点在している長石ポーフィロクラストが認められる.

ステップ状のプレシャーシャドゥは,左ずれのセンスを示す.
⇒非対称プレッシャーシャドゥによる剪断のセンスの判定

偏光顕微鏡写真(画像をクリック⇒拡大

 

雲母類の消光位を避けるため,試料台を時計回りに少し回転して撮影.
斜長石(左上),カリ長石(右下),ざくろ石(左下)のポーフィロクラスト.
細粒基質に黒雲母と白雲母を多量に含む.暗色の炭質包有物を含む.

 

薄片表面とマイロナイト面構造の交線の向きを,写真の長辺と一致させて撮影.(高倍率)
雲母類の長軸の伸びの方向が示す面をSb面と定義する.Sb面は,マイロナイト面構造にたいし,反時計回りに斜交している.一方,マイロナイト面構造にたいし時計回りに斜交する延性剪断面(Ss面)が認められる.Sb面とSs面の斜交関係は,左ずれのセンスを示している.
⇒非対称プレッシャーシャドゥによる剪断のセンスの判定

No.8-2花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト

試料番号03122305(中央構造線からの距離620m)

偏光顕微鏡写真(画像をクリック⇒拡大

 

斜長石ポーフィロクラストの周縁に再結晶鉱物が生成している.デルタ(δ)型プレシャーシャドゥの形態はポーフィロクラストの左回り回転を示し,左ずれのセンスを示す.

 

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