大鹿村中央構造線博物館



原岩からマイロナイトへの変化③花崗閃緑岩

花崗閃緑岩は、花崗岩質の岩石だが、カリ長石を多少含む。
 カリ長石を含む原岩から形成されたマイロナイトの細粒基質には,無色鉱物からなる帯が形成され,見かけ上も流動的に見える. この無色の帯と,細粒黒雲母を含むため暗色に見える部分との対比により,組成縞(フラクション・バンディング)が形成され,顕著なマイロナイト面構造が形成されている.

No.13-4細粒片麻状黒雲母花崗岩
試料番号03122207(中央構造線からの距離1320m) 

fig08a,b,c

No.13-4露頭の試料No.03122207(fig08a,b,c)は,No.13露頭東方からNo.12露頭にかけてところどころに見られる黒雲母花崗閃緑岩~黒雲母花崗岩の露頭のひとつから採取したものである.fig08cは,屈折率が低いカリ長石の周縁に見えるベッケ線を強調するために,焦点を少しずらして撮影している.
カリ長石の縁辺には細粒石英と斜長石からなるミルメカイトが形成されている(fig08c,高倍率).

No.10角閃石黒雲母花崗閃緑岩源プロトマイロナイト(優白部)
試料番号03122214(中央構造線からの距離1030m) 

fig09a,b

No.10露頭の試料No.03122214(fig09)は,プロトマイロナイト・ゾーンの不均質な試料の優白部である.fig05の薄片は,同じ試料の優黒質な部分である.(高倍率)
この試料でも,カリ長石の周囲にはミルメカイトが形成されている.基質を構成する細粒石英・長石集合体の形成には,ミルメカイト化が関わっていると考えらる.生成された細粒石英と斜長石および残存するカリ長石片が帯状に配列している.

No.8花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト
試料番号03122217(中央構造線からの距離670m) 

fig10a,b,c

No.8-2花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト
試料番号03122305(中央構造線からの距離620m) 

fig11a,b,c

No.8露頭の試料No.03122217(fig10)とNo.8-2露頭の試料No.03122305(fig11)は,花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイトである.
No.8露頭から道沿いにわずか50m北に位置するNo.8+2露頭の角閃石黒雲母トーナル岩源プロトマイロナイト(fig06)では,石英の粒径が不均一で,原形に近い黒雲母も残存していることを前節で述べた.しかし,こちらの花崗閃緑岩起源のマイロナイトは変形が均一で,再結晶石英の最大粒径は0.25mmを超えるものはなく,平均粒径も0.02~0.1mmの範囲に収まっている.黒雲母も細粒化している.
ポーフィロクラストの両翼にはプレッシャー・シャドゥがみられる.プレッシャー・シャドゥに形成される再結晶鉱物は,細粒基質の平均的な粒径と比較して粒径が大きく不純物も少ないため,細粒基質の他の部分から区別できる.プレッシャー・シャドゥは肉眼でも白く見え,細粒黒雲母のため暗色に見える細粒基質中にポーフィロクラストから尾を引いたように見える(fig11a,12a).
これらの花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイトでは,ミルメカイト化にともなって形成された無色鉱物からなる帯状部分とプレッシャー・シャドゥが連結して,暗色に見える部分と縞状をなす(fig11a).この細粒基質の縞状組織はフラクション・バンディングと呼ばれ,マイロナイト面構造を規定する変形組織のひとつである.

No.6+1花崗閃緑岩源マイロナイト(組成縞状構造が発達)
試料番号03122309(中央構造線からの距離520m) 

fig12a,b,c

No.6+1露頭の試料No.03122309(fig12)は,フラクション・バンディングがよく発達した花崗閃緑岩源マイロナイトである.やや風化したポーフィロクラスティック・マイロナイトでは,斜長石ポーフィロクラストは変質して白く濁って見えるのに対し,カリ長石ポーフィロクラストは透明感がある(fig12a).斜長石,カリ長石のほか,褐簾石のポーフィロクラストも存在する(fig12b~cの拡大画像).
おそらく変形条件は同一と思われる近傍のトーナル岩を原岩とするマイロナイト(fig07)と比べると,花崗閃緑岩を原岩とするこの試料は,ポーフィロクラストの量比が少なく,フラクション・バンディングが発達し,面構造が顕著で,ずっと流動的な見かけを呈している.

 

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