原岩からマイロナイトへの変化②トーナル岩
トーナル岩は、花崗岩質の岩石であるが、カリ長石を含まない特徴がある。
トーナル岩を原岩とするマイロナイトは,ポーフィロクラストの量比が多く,面構造の発達が悪い.
No.13マイロニティック中粒片麻状角閃石黒雲母トーナル岩
試料番号03122201,03(中央構造線からの距離1560m)
No.13露頭の試料No.03122201(fig03)と試料No.03122203(fig04)は,角閃石を含み,長石は斜長石のみからなる角閃石黒雲母トーナル岩である.
角閃石や斜長石には変形が見られない.黒雲母もほとんど変形していない.しかし石英には多結晶化が認められる.fig04bの自形斜長石下側の,拡大画像にQzの記号を付した石英は,再結晶石英集合体になっている.上部に褐簾石が見えるが,褐簾石もポーフィロクラストとして残りやすい鉱物種である.
No.10角閃石黒雲母花崗閃緑岩源プロトマイロナイト(優黒部)
試料番号03122214(中央構造線からの距離1030m)
fig05a.b,c
No.10露頭の試料No.03122214は,プロトマイロナイト・ゾーンの不均質な試料であり、fig.05は優黒部の画像である.褐簾石,角閃石,斜長石のポーフィロクラストの粒間を縫うように,多結晶化した石英が配列している.
No.8+2角閃石黒雲母トーナル岩源プロトマイロナイト
試料番号03122216(中央構造線からの距離720m)
fig06a,b,c
No.8+2露頭の試料No.03122216(fig06a,b,c)は,角閃石黒雲母トーナル岩を原岩とするプロトマイロナイトである.角閃石と斜長石がポーフィロクラストとして多量に残存している.ポーフィロクラストに取囲まれた領域の石英は細粒化しているが,再結晶石英集合体のプール全体の外形は原形を比較的保っているものもある.再結晶石英の最大粒径は0.4mmである.
この試料では薄片の部位により変形にばらつきが残り,機械的な破砕に弱いはずの黒雲母も原形に近い形で保たれているものがある.再結晶石英の最大粒径が0.25mmを超えるものが残存していることと,ほぼ原型をとどめる黒雲母が存在していることから,この露頭まで「プロトマイロナイト」に区分した.
No.6細粒角閃石黒雲母トーナル岩源マイロナイト
試料番号03122312(中央構造線からの距離510m)
No.6露頭の試料No.03122312(fig07)は,トーナル岩を原岩とするマイロナイトである.研磨片(fig07a)のように,斜長石ポーフィロクラストに富み,面構造が顕著ではない.
薄片(fig07b~c)では,細粒基質がポーフィロクラストの間を縫うように形成されている.中央右寄りの,角閃石ポーフィロクラストには脆性破断が生じ,周囲には緑簾石が生じている.
これらのトーナル岩を原岩とする試料どうしを比較すると,再結晶石英集合体の結晶粒径が,中央構造線に近づくにつれ系統的に減少している.